企業側が転職エージェントを利用するメリット~求職者が豊富な情報を得られる一面も~
人手不足が表面化する中、企業が転職サイトに募集広告を掲載しても応募ゼロというケースが珍しくありません。
一方、企業側が積極的に転職エージェントのサポートを受けて、効果的な求人を展開した上で求めるスペックに見合う応募者を増やす事例も増えています。
ハローワークも、無料の転職エージェントとして企業に活用されています。
企業側が転職エージェントを利用するメリットを知った上で、効果的な転職活動を進めてみてはいかがでしょうか。
目次
企業が転職エージェントに支払う紹介手数料が、転職サイトの掲載料金に近い場合が多い
企業側が支払う費用を比較してみる
企業側がリクナビNEXTなどの転職サイト(求人サイト)を利用する際は、応募の有無にかかわらず求人掲載料金を支払うのが一般的です。
最近では、indeedのように一定の条件を満たせば無料で求人を掲載できるサイトも登場しています。
一方、リクルートエージェントなどの転職エージェント(紹介会社)では、人材採用が成立してから紹介料金を支払う成功報酬制が採用されています。
求人掲載が無料で行える点がメリットといえます。
求人サイト、転職エージェントそれぞれの費用例(消費税別)をチェックしてみましょう。
大手求人サイトに支払う掲載料金例
求人サイトに支払う料金が高いほど、求人掲載枠が大きくなったり検索順位が上がったりするなど求人が目立ちやすくなるので、企業にとっては採用のチャンスが大きくなります。
長期間や複数回の掲載で料金が安くなるケースや、業種や地域ごとの特集によって効果的に求人をアピールできるチャンスが設けられているのも特徴です。
リクナビNEXTで4週間求人を掲載する場合、約600文字の募集要項のみを掲載できるN1タイプは20万円、企業メッセージや社員インタビューも追加できるN3タイプでは55万円の費用がかかります。
最上位のN5タイプでは企業側が自由にデザインできる項目が設けられていますが、掲載費用は4週間で180万円です。
マイナビ転職では、複数回の求人掲載を確約することで掲載料が割引になるプランが用意されています。
リクナビNEXTのN1タイプに相当するMT-D企画では4週間の掲載1回で20万円ですが、2回掲載では36万円(1回あたり18万円)、12回掲載だと150万円(1回あたり12万5千円)です。
いずれも、掲載期間が長くなれば高額な掲載費用が必要となり、求人エージェントに支払う料金に近づきます。
転職エージェントに支払う紹介手数料は年収の20%~35%が相場
転職エージェントの手数料率は地域や採用職種により異なりますが、想定年収(理論年収)の20%~40%に設定するエージェントがほとんどです。
内定時に決定した月給(総支給額)と支給予定の賞与額とを合算した額が想定年収となり、例えば年収500万円で採用が決定した場合には100万円~200万円の紹介手数料がかかります。
求職者側でも年収ベースで給与交渉を行うケースが多いことから、業績や個人評価によっては賞与額が変動する特約を雇用契約の中に設ける企業もあります。
エージェントの担当者によっては、応募者に提示する初年度年収を低くして紹介手数料を事実上割引する代わりに、内定者に入社準備金などを支払うよう持ちかけて、実質的に想定年収の底上げを図るケースもあるようです。
提示された年収が低い場合は、入社準備金の有無や入社2年目の昇給可能性・昇給額をチェックして、転職後の年収ダウンを回避するようにしましょう。
転職エージェント経由で入社した人が何らかの事情で早期退職した場合、企業側は退職時期に応じて紹介手数料の返金を受けています。
doda人材紹介サービスの人材紹介コラムには、入社後1か月以内に退職した場合は紹介手数料の80%を、1か月超3か月以内の退職であれば紹介手数料の50%をそれぞれ返金する規定が例として紹介されています。
仮に入社日の翌日から出勤しなくなった場合でも、紹介手数料の20%を転職エージェントに支払っている計算となりますが、求人サイトの掲載料金と比べると安い値段なので、企業にとって費用リスクが低いといえるでしょう。
同じコストをかけるなら転職エージェントを利用する企業も
求人サイトの掲載費用と転職エージェントの紹介手数料が似たような金額なので、書類選考(社内選考)などで候補者の人選を代行してもらえる転職エージェントを利用する企業が増えています。
転職エージェント経由での応募時は、第三者目線で選考されることを念頭に置き、職歴や自己アピールに加えて応募企業に特化した志望動機を細かく作成することが大切です。
転職エージェントでは採用成功まで求人掲載が無料で、反響に連動した情報更新も行われている
公開求人の場合は、転職エージェントのサイトに無料で求人を掲載することができます。
有料の求人サイトと比べると画面上の情報量が少ないですが、キャリジェット(Careerjet)やindeedの求人検索結果にも自動的に反映される場合があるので、募集内容が求職者の目に触れるチャンスは豊富です。
また、求人の反響に応じて掲載内容の調整を依頼するケースもあるので、応募を検討する企業の情報をこまめにチェックすることが有利な転職を実現するためのポイントといえます。
ハローワークでは転職エージェントに近いサービスが完全無料で提供され、企業・求職者双方にメリットがある
ハローワークは失業者が行く場所というイメージがありますが、在職中の人にも多く利用されています。
実際に、夜間・土曜の相談に対応するハローワークでは、離職中の人に対して早い時間帯の利用を促し、仕事帰りや休暇を取っている人が利用しやすい環境が整備されています。
企業に対しては、求人票の掲載や応募希望者の紹介といった転職エージェントに近いサービスが提供されているので、完全無料ながら高いパフォーマンスで採用活動を実現することが可能です。
また、完全無料というメリットを活かし、採用コストを低減した分を従業員の待遇改善や入社祝い金に充てようと、求人サイトを利用せずにハローワークだけに求人を展開する企業も存在します。
したがって、好条件で転職を希望する人にとってハローワークは穴場スポットともいえます。
企業側・求職者側それぞれに対するハローワークのサービス内容を解説します。
企業に対するサービスメニュー
求人票の作成
ハローワークを通じて求人募集を行う際は、企業担当者が直接管轄のハローワークに出向いて相談が行われています。
求人サイトのように求人企業の現地取材は行われませんが、求人申込書(募集要項)の記載事項に関する質問を通じて、企業のビジョンや求める人材像を伝えることになります。
労働基準法などの法律に違反する求人は質問時点で排除されるので、ブラック企業という悪評を未然に防ぐことができるのが企業にとってのメリットです。
最近では、固定残業代の内訳や変形労働時間制のシフト例について細かくチェックされるため、求人サイトや転職エージェント以上に募集時の労働条件が明確化される傾向にあります。
また、企業紹介や職場風景の画像を公開し、ハローワークの求人検索パソコンで求職者に閲覧してもらうことも可能です。
A4横向き1~2枚分を目安に自由なレイアウトで画像を作成した上で、リクナビNEXTの最上位(N5)タイプに匹敵する効果を期待できます。
通常の求人票は掲載開始から日数が経つにつれて検索順位が下がりますが、画像付き求人では特別求人としてピックアップされるため注目度がアップします。
応募希望者の紹介
応募希望者が現れたら、ハローワークから採用担当者宛に電話連絡が入り、応募者の氏名と年齢が伝えられます。
必要に応じて応募者と会話することができるため、書類選考や面接を行う前に応募者の雰囲気を直接知ることが可能です。
電話対応を選考材料の一つとできる点が、転職エージェントにはないメリットといえます。
なお、企業によってはハローワークからの電話連絡なしに応募書類を受け付けている場合があります。
雇用関係助成金の提案
ハローワークからは、求人の応募と合わせて受給可能性がある助成金の提案を受けることができます。
短期間に複数回転職した人や未経験職種を希望する人を雇用した場合は、トライアル雇用助成金を受給できる可能性があり、事前にトライアル雇用での応募可否についてハローワークから打診されます。
また、ひとり親や障がいのある人を採用した場合には、特定求職者雇用開発助成金の受給案内が届きます。
採用日の前後6か月間に会社都合による解雇者を出していないことなど一定の条件はありますが、企業にとっては経済的メリットが大きいです。
求職者に対するサービスメニュー
ハローワークでは、求職者への対面コンサルティングや求人紹介を実施しています。
空いている窓口に誘導されるため相談ごとに担当者が異なるのが建前ですが、実際には担当者の指名も受け付けているので、継続的なサポートを受けることが可能です。
特定の担当者に対し、企業からの細かな情報提供が行われている実例もあり、相談対応に活用されています。
過去を含めた応募状況をチェックすることや、応募書類の添削や面接トレーニングを受けることも可能です。
地域によっては、45歳未満の就職活動に特化した「わかものハローワーク」や第二新卒の転職に対応した「新卒応援ハローワーク」も用意されています。
転職エージェントとしては優秀な部類
一部の転職エージェントでは紹介料獲得をねらいとして、求職者の意に沿わない転職を勧めたりスペック以上の年収提示を促したりするケースが見受けられます。
一方、公的機関であるハローワークは中立・客観的な立場でのサポートを提供しているため、有利不利は別として求職者や企業に対し主観を押し付けることはありません。
適正な年収を提示して、その内容に納得した人を採用できる点が企業側にとってのメリットといえます。
なお、ハローワークの担当者が求職者に代わり給与交渉を行うことはありません。
応募方法にかかわらず最大限のアピールを
求職者にとっては、企業側の採用コストが低いハローワーク経由での応募が有利と思われがちですが、実際には応募方法にかかわらず企業が求める基準に達する人材が内定を獲得しています。
採用後にミスマッチが発覚した場合、社員教育にかけた時間やコストが無駄になるだけでなく、採用活動をゼロから開始することになるからです。
転職エージェントに対して応募者の獲得や選考作業の一部を外注できることが、企業にとってのメリットですが、最終的な採用可否は必ず求人企業が決定しています。
そのため、応募方法にかかわらず志望動機をはじめ、職歴などで得たスキルを自分の言葉で最大限アピールすることが、内定への近道だといえます。